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2009/02/20

角田光代 八日目の蝉

八日目の蝉
角田 光代
4120038165

 このところ、専門書かミステリーばかり読んでいたのですが、久しぶりに、よみごたえのあるすごい小説に出会えてうれしいです。角田光代著 八日目の蝉 ーー ラストはボロボロ泣いてしまったし、余韻が残り、いろいろなことを考えさせられました。ちなみに角田作品を読んだのは初めて。

 「長編サスペンス」という謳い文句に惹かれて手に取ったものの、たんなるサスペンスにとどまらず、とくに小説後半は、非常に深い、生きることをめぐる切実なテーマがありました。

 小説前半は、「母親」の視点から語られ、後半、一転して、「子ども」の視点から語られます。この構成がとても斬新。まるで人生を「表と裏から」見ているような感じ。そして、ひとりの人の人生(あるいは私の人生)を、立体的にみる、多視点からに見ることがいかに大切か…そうすることで、受け入れ難かった「私の人生」を、逃げずに見ようとすることができ始める…もちろん、痛みを伴う過程であるけれど。そんな感じがしました。

 「私は誰も憎みたくなかったんだ」 と主人公は気づきますが、作者は、誰をも悪者にしないように、「そうせざるを得なかった」ひとりひとりの人生を描いているように思いました。どちらが原因でどちらが結果なのか、誰が悪いのか…それは簡単にわかることではないのですね。

 どうして私が? と自分を被害者としてとらえているうちは、何も生まれない。そういう問い自体がまちがっていた、と気づくとき、主人公は新しい一歩を歩み始めます。友情という支えを得て。

 おもしろいことに、この小説にはたくさんの人がでてくるのに、ほとんどが女性です。男は3人ぐらいしか出てきません。しかもみな弱々しい。何も決められない人か、病気で死ぬ人。女性ににとって彼らは、お金か子ども(精子)をくれるだけの存在。どちらも大切ですが、でも、彼ら自身は、女性の生きる支えにはなっていません。主人公も、最後、お腹の子を、母や女友だちといっしょに育てていこうと決心します。

 これはもしかして現代を象徴しているのかな? むかしは、母ー娘(子)の密着を切るものは、男性だったはず。でもいまは… 女性は、自分の母や娘(子)とのつながりをず〜っと保ったまま、男性を必要とせずに生きるのかしら… 

 それとも、人間のもっとも奥深いところにあるのは、言葉以前の母子一体感…ということの強調かな…本題からはそれるけれど、こんなことも考えてしまいました。

 瀬戸内海の美しい海、緑、光…が、傷ついた主人公たちを優しく包み、癒してくれます… そういう場所、匂い、日常生活のルーティーンといったものの持つ力、また、幼い子どもや、お腹の子の与えてくれる力、など、とくに女性にとっては共感できるものが多いのではないかな〜と思います。重たい話だけれど、読後感は一応さわやか。読んでよかったです〜!

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コメント

これは面白そうですね! 素晴らしい書評をありがとうございます。アマゾンのカスタマレビューもチェックしましたが、それを読んでいるだけでもなんだか鼻の奥がツーンとしてしまいました。読みたいな。今度シカゴの紀伊国屋に行ったら探してみます。(日本のアマゾンで注文すると、送料がすごく高いので!)
次に私が帰国したら、女同士だけでお会いして、ゴリさんともゆっくりお話したいな〜!

またまた素晴らしい記事ですね!
さっそく注文したくなってしまいました。

関係ないですが、カウンセリングで良かったことは、多視点から自分をみつめることでした。これによって、母のことも一応多視点から理解しようと努められたし..。

まさに、男性を必要としないで生きていってしまいそうな者からのコメントでしたー(笑)

ご無沙汰しております!いつも、楽しくて興味深い記事を読ませて頂いて、「コメントしよう!」と思いつつ、最近とっても無精者ですみません。
ゴリさんに紹介して頂いて手に取った本は沢山ありますが、今日の本も早速読んでみようと思います。ご紹介ありがとうございます。
数週間前に息子の受験も無事終えて、その開放感もあり、ますます「本の虫」と化していますhappy02(私が)。
その息子も、以前より楽しそうに「読書」をするようになってきました。良い本、おもしろい本は世界に無数に無限にありますから、いつまでも続く冒険のように、楽しみながら大海原に漕ぎ出していきたいなあという気分です。

はちこさん、
なんか熱く書きすぎてしまったかも(汗)。
でも、アマゾンレビューでも評価高かったですよね。手にはいるといいですね!
次回は女同士で…ぜひぜひ〜!!
(夫が嫉妬しちゃうな。笑)

黒猫さん、
多視点で見る経験、カウンセリングでされたのですね。素晴らしいな〜 
なかなか機会がないとできない経験ですよね。
本もし読まれたら、感想聞かせてくださいね〜

はるかさん、
お久しぶりです! コメント残してくださり、うれしいです。でも無理しないでね…読んでいただけるだけで幸せですので♪
息子さん受験終わられたのですね!はるかさんもお疲れ様でした!
はるかさんの影響で、読書好きなのですね。同じ本を読んで話し合ったりできるのでしょうか。うらやましい。
本は世界に無数にある…本当に。限りある時間のなかで、何を読むか…私なんか読むのが遅いので、本当は吟味しないといけないのだろうけど、ついミステリーに走ってしまって…
はるかさんのお薦めの本もいつか教えてね。

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