2016年12月に読んだ小説は、
バラカ、怪物はささやく、みかづき、コンビニ人間、八月の六日間、でした。
●バラカ 桐野夏生
久しぶりの桐野さんの小説。待ってました!という感じ。
3.11 原発問題を背景にした近未来小説。
原発をめぐるゴシップや犯罪、
移民問題や、ドバイでの人身売買など、
社会の闇、人間のもつ悪にメスを入れる作品。
カリスマ的な魅力を持つ、キリスト教会牧師も出てきて。。。
まあ、読んでみてのお楽しみです!
ワタシとしては、サイコパスみたいな冷血な川島が
どうして最後ああなったのか、、、まだ腑に落ちません(笑)
力作だと思います!
●怪物はささやく パトリック・ネス ジム・ケイ
海外文学、しかも児童文学、であまり読まないジャンルですが、
タイトルに惹かれて読みました。
とても良かった!
思春期の少年、コナーは母と二人ぐらし。
しかし、母は末期ガンに侵されている。
コナーは悪夢を見る。
木の怪物が出てくるのだ。
そして怪物は物語を語るのだった。。。
本当の感情と向き合う、
見たくないものと向き合うには、
「物語」が必要で、
ときに「怪物」が必要なのかもしれません。
(それは、自分自身であったりするのだが。。。)
最後は胸が熱くなるような作品でした。
●みかづき 森絵都
森絵都さんの長編小説!
三世代(四世代かも?)にわたる、
教育をめぐる物語であり、
家族の物語。
公教育でなく、その隙間を縫う「塾」に人生を捧げた人々。
「塾」の歴史といってもよいのかもしれません。
人物が魅力的であり、熱い熱い、情熱にあふれています。
教育をめぐって、私利私欲でなく、本当に子どもに必要なことは、
と模索し、けんかをする大人達。
ワタシ的には、前半、昭和の物語が面白かったな〜
「用務員さん」がその部屋で子どもに勉強を教えていたりして、
おおらかな時代だったんだな〜と思います。
心があったか〜くなること請け合いです!
●コンビニ人間 村田 沙耶香
芥川賞作品。
これは強烈でした!
時代の最先端ともいえるでしょうかね?
小さいときから、周りとうまく合わせられず、
人にとっての「あたりまえ」や「自然な感情」が育たなかった女性。
親はカウンセリングや治療に連れて行こうとしたけれど
だんことして行かなかった。
大学生になったと同時にコンビニでアルバイトを始めて
18年間続けている。
結婚する気がないし、友達もあまりいない(幼なじみはいる)。
「常識」や振る舞い方は、妹に聞く。
コンビ二のマニュアルや、
一緒に働く人の口癖、しゃべり方をまねる。
コンビ二で働くこと以外に
楽しみややりがいはない。
コンビ二で働くために、
生活のすべてを集中していく。
コンビニと一体化したかのような、
コンビニの声を聞きながら、仕事をスムーズに進めていく。
その描写がみごと!
そこに、アルバイターとして若い男性が入ってくるが、
やる気がなく、すぐに辞めてしまう(辞めさせられたのかも?)
その後二人は再会し、
互いのメリットのために、同居することになるのです。
二人とも、いまでいえば、発達障害(非定型発達)
と思われるのですが、
女性は、それを受け入れて、というのか、
悩みがありません。
ただ、周りの質問やお節介に
(どうして結婚しないの、どうして正社員にならないの?)
辟易しているだけ。
かたや、男性は、
結婚してない自分、定職のない自分がいやで受け入れられず
(自己愛の問題があるのでしょう)
この女性の生き方も批判します。
そして、世の中を批判し、
被害者意識を持っています。
このふたり、どっちが幸せなんだろうというのは、
一目瞭然です。
彼女の場合、コンビ二という自分の生きる場所を見つけたことは
幸せだったんだと思います。
だから、周りはお節介せずに、優しく見守っていればいい。
「学校へいかなきゃ、たいへんなことになる」
「大学に行かないと就職できない」
「〇〇しないとろくな大人になれない」
「結婚してないと一人前でない」
「正社員にならないと幸せになれない」
などなど、大人達は、脅しますが、
果たしてそうなんでしょうか!?
とワタシも疑問に思います。
個人の生き方に対して
そして、
社会(世間)のあり方について
強烈なメッセージを投げかけてくれる小説。
でも、とっても面白いです!!
●八月の六日間 北村薫
出会えてよかった〜と思える作品のひとつ。
友人がとってもよかったと言っていたので、
是非読みたいと思っていました。
アラフォー独身女性が、単独登山をする物語。
ちょうど、テレビドラマ「山女日記」を見終わったところで
山に行きたい!もっと知りたい!という気持ちになっていたので、
読むタイミング的にはベストでした!
淡々と一人称で書かれていて、日記、備忘録のような小説。
軽やかで、登山の持ち物や山小屋での食事など
楽しそう!と思ってしまう。
もちろん、危険や体力の消耗、
残念だけど引き返す、など、楽しいだけではない
むしろつらいことだらけの登山がリアルに書かれていると思います。
主人公は、友人、恋人との別れなど、
つらい経験をし、その時に、一人山に向かいます。
そこで、過去を思い出したり、
その過去に違う意味を見いだしたり。。。
登山で自分に向き合わされるんだな〜と思います。
でも山小屋で出会う人との交流が
ほどよい距離でここちよいです。
誰にも言えなかった話ができたり、
ゆきずりだからこそ、話せることもあるのかもしれないですね。
小説の最後の注意書き?には、
「これは初心者向けの登山でないから
くれぐれも真似しないように。
十分な訓練、準備をしてください」
といったようなことが書かれていて親切でした。
それぐらい、これを読むと
山に行きたくなる人が続出なのかも!
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